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彼が居を構える街「赤松楼」についても語らなくてはならない。
元々、此所は「山上の楽園」と呼ばれた鉱山だった。
それが廃鉱となり、廃墟マニアに取り上げられたりする様になった頃、何者かがこの廃鉱に出入りする様になり、建物跡を整地して楼閣を作り始めた。
不法占拠した上に勝手に建造物を作られては、管理者である市も面白くない。
警察と共同して、楼閣を作っている奴等を排除しようとした。
だが、その試みはことごとく失敗に終わった。
彼等にとっては認めたくない、認めてはならない事であるが、超自然的な力が作用して、鉱山跡に入れないのである。
やがて、それは国が知る事となり、自衛隊が派遣された。
しかし、それは国にとって藪蛇となった。
派遣した自衛隊が、楼閣を作っている何者かに取り込まれてしまったのである。
この非常事態に国は米軍に協力要請しようかと考えている時、楼閣は完成した。
そして、その楼閣を作った何者かから国に対してメッセージが発せられた。
「この地に関わらざれば、敵対せず。請う、放任されん事を」
当然、国は激怒した。
まるで独立宣言みたいな物言いではないか!
だが、時の首相は悩んだ。
此所で米軍の介入を要請していいものだろうか?
どうせ、今回の事態は米国に知られているだろう。
それに対する処理を国家の名に於いて任せるという事が問題ではないか?
ただでさえ侮られているのに、益々その傾向を強めてしまうのではないか?
そして、政府は決断した。
臭いモノに蓋をしてしまおう。
政府は管理者である市に幾許かの補助金を渡し、かの地を政府直轄の特区扱いにしてしまったのである。
かくして、楼閣がそびえ立つ鉱山跡は治外法権の地と成り果てたのである。
何者かはどんどん楼閣を増築していった。
それと同時に地下も人が居住出来る様に変えていった。
楼閣の周囲には街が作られ始め、国という頚木から逃れたいあぶれ者達がそこに集結してきた。
あぶれ者ばかりではない。
天に届くのではないか、と思われる程の超高層の楼閣と地の底を荒らす程に深く作られた地下街が作用したのか、街には人為らざるモノ達も現われ始めた。
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