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「じゃあ、近藤君宿題を提出してください」
いつの間にか、先生が横に立っていて苛々した様子で手を出していた。
近藤というのは、今まで出ることがなかった俺の本名である。
この本名で俺を呼ぶ人は先生と親以外、一人しかいない。
「また、忘れですか?」
先生は、俺が黙っていると勝手に納得して次の席に向かっていった。
「何か、忘れたのか?」
レイリュウが興味津々といったようで俺に聞いてきた。
「正確には、忘れたんじゃない」
「ん?」
「あそこの席に座ってる奴見えるか?」
「ああ、どことなく狐顔の奴だな」
「そう、あいつが俺のカバンから宿題を盗むんだ」
「それまたどうして?」
「俺が宿題を忘れて、先生に叱られる姿を見たいからさ」
こんな事が日に2回は必ずある。
盗まれた宿題は、ゴミ箱の中に大抵入っているのだがその頃には成績は下がっているという寸法だ。
「ほう、なかなかのひねくれた根性をしておる」
「だろう?」
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