昼休み

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「く、来るな」 そう言おうと、口を開くが出たのは言葉ではなく息・・。 「私が誰だかわかったか」 男が誰にもマネできないような、大きな笑い声を出す。 そんな声さえも、肌を指すように俺の体を傷つける。 忘れもしない、俺はこの男に人生を狂わされた。 影を、取られた。 理不尽に、強引に、自分勝手に。 だだ、目だけは笑っていない不気味な笑みを浮かべながら。 本当の意味で影を奪われた、あの日から俺は人の目を気にしなくてはならなくなってしまった。 影がない人間、それはもう化け物と呼ばれても可笑しくない。 過度の挙動不審、人見知り、日光恐怖症。 それが、苛められる原因にもなった。 晴れの日は、外に出なくなった。 止めてくれ、来ないでくれ、もう俺から人間を奪わないでくれ。 「まだ、お前はそんな目をしているのか。せっかく影を取りさらってやったというのに」 男は、太い指で頭をわしわしと掻いて俺を鋭い目で睨みつけた。
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