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「それからメディアに露出する場合があるから、小遣い程度に臨時収入があるよ。」
「………。」
言葉が出てこない。
こんなご時世でこんなアルバイト、どこにある!?
「愛想振りまいてるだけでお金が入る仕事、なかなかないよ~。金欠な高校生にはもってこいだと思うけどなぁ…。」
「…俺―…!!」
いや待て!!しっかりしろ俺!
流されちゃいけない。
今、誘惑に負けそうになった自分に驚いた。
ごくりと蓮は先の言葉を飲み込んだ。
承諾して見ろ、俺が愛してる平凡なんぞすぐさま奪い去られるんだぞ!
いいのか!お金に動かされるなんて汚い証拠だ!
まるでもう一人の自分がいるかのような錯覚を覚える。
「…か、考えさせてください。」
「そう?」
蓮の返答に葵は少し残念そうな表情をした。
いいアルバイトだけど、即決はできないな…。
「急な話で申し訳ない。蓮くん、ゆっくり考えてくれ。さぁ、もうこんな時間になってしまった。」
「あっ本当だ!俺帰らないと!」
千里さんの言葉に時計を見ると、7時を回っていた。
外も日が落ちて暗くなっている。
「送ってくよ。」
「いやっ!すぐそこなんで…」
「遠慮すんなって。男の一人歩きは危ないっていうだろ。」
…葵さん、それ女の一人歩きじゃ…。
心中で盛大にツッこんだが、言葉にするのはやめた。
とにかく面倒なのは嫌いだ。
結局、俺はお言葉に甘えて葵さんに送ってもらうことにした。
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