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「…てか、軽トラなんすね…。」
「ん?あぁ、運転しやすいからね!」
…激しく期待を裏切ってる気がする。
ツッこみ所が満載な人だ、本当に面倒くさい。
と、なんとも失礼なことを蓮は思っていた。
そんなこんなで寮の前に着いてしまった。
店から寮までは近くて、車では5分ちょっとで到着してしまう。
それが何だか申し訳なかった。
本当に、送ってもらわなくても大丈夫だったんだけどな…。
「送ってもらってありがとうございました!」
車から降りてお礼を言う蓮に、葵はニコリと笑って手をヒラヒラと振る。
軽く頭を下げて踵を返すと"蓮!!"と名前を呼ばれて足が止まった。
振り返ると葵さんが手招きしている。
まだ何かあったのか?
不思議そうな表情を浮かべたまま蓮は再び葵さんへと歩を進める。
「どうかしたんですか―…ぐぇっ!!!」
急にネクタイを引っ張られて身体が引き寄せられた。
締め上げられた苦しさから変な声が出たと同時に、触れた唇。
「…いい返事、待ってるよ。」
唇が離れた瞬間、至近距離にあった葵さんの顔。
まるで時間が止まったかのように蓮は一点を見つめたまま動かない。
パニック状態なのは確かではあるが、必死に頭の中でこの状況を整理していた。
なんだ、今の。俺なにされた?
キスされた…葵さんに!?
「…顔真っ赤。」
「!!??」
急激に顔に熱が集まるのがわかった。
俺は何も言えずに走り去った。
「…からかいがいのある子だな。」
蓮の背中に呟く葵の言葉も本人は知るはずもなく。
「…なんなんだ…っあの人!」
唇をゴシゴシ拭いながら全速力で走った。
…初めてだったのに!!!
ファーストキスの相手が男ってなんなんだよ――――!!!!
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