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「ふぁぁぁ~、眠ぃ。」
パタパタと怠そうに足音を鳴らして歩く少年。
包み隠さず大口を開けて欠伸をする彼だが絵になってしまうのは、その容姿が異常なほど優れているからだろう。
すれ違う生徒たちが目をとろんとさせながら見つめていることさえ、少年は気付いていない。
いつもの日常、また一日が始まる。
彼の心中はそれだけであった。
少年の名前は、赤里蓮(セキリ レン)。
そう、彼は"平凡"をこよなく愛する少年なのだ。
「…おは―…うぉ!!??」
「れーん!おはよ!待ってたよ!」
教室に入るなり蓮に抱きつくという過激なお出迎えをしたのは、結城純吾(ユウキ ジュンゴ)。
蓮の親友だ。
…こいつは、毎日毎日。
呆れた溜息をこぼしながらべりっと純吾を引き剥がす。
こんな朝の待遇を毎日繰り返されている蓮だが、心の底から嫌がっているわけではない。
彼にとって純吾という親友が居てこその自分の日常だと思っているからだ。
「…挨拶くらいさせてくれよ。」
「ゴメンゴメン!でもこれ、見てよ!」
"じゃーん!"と蓮の顔の前に何かの券が2枚出された。
蓮は首を傾げながらそれを手に取り見てみる。
「…喫茶店、Gimmick…?」
「そう!割引券もらっちゃったんだよー!なかなか手に入らないのに!しかも2枚!」
喫茶店Gimmick。
確か今すごい人気のお店だ。
その理由は、ウェイターが全員イケメンだから。
雑誌でも取り上げられるくらいの人気だそうだ。
「で、俺に見せてどうする気だ?」
「だから、今日の放課後一緒に―…」
「断る。」
「ちょっと!まだ最後まで言ってないのに!!」
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