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――ガチャ バタン!
寮に帰って自分の部屋に着いた。
後ろ手で玄関の扉を閉めて、深く溜息を吐いた。
「…………。」
とにかく落ち着こう。
バクバクと脈打つ胸を押さえながら、部屋の扉を開けた。
「あ、蓮!おかえり!」
純吾が笑顔で迎えてくれた。
蓮のルームメイトは純吾である。
いつも飽きるほど見ている純吾の顔を見て、自然と蓮の表情は落ち着きを取り戻した。
「随分遅かったね。熱烈なお礼でもされてたの?」
「…まぁ、な。おかげでどっと疲れた。」
Gimmickで働くのを誘われたことは、まだ黙っておこう。
ちゃんと決まったら、純吾には一番に言うつもりだ。
「キャンディー舐める?疲れた時は糖分だよ!」
「いや、ここは牛乳でいく。」
「そっか、蓮は身長小さいもんね。」
「…純吾、今なんて?」
"な、なんでもない"と視線を逸らした純吾を睨みつけて、冷蔵庫から牛乳を取り出す。
純吾は何かと蓮に気を使い世話を焼く。
蓮はそれを時折鬱陶しく思う時もあるが、素直に感謝しているときも多い。
自分の体調を気にしてキャンディーを差し出してくれたり、身長が小さいと他の奴に言われると苛つくことだって、純吾の口から出るのであれば苛つかないし、許せると思うのだ。
純吾の前では決して言えないが、不思議な自分たちの友情に笑みがこぼれるのと同時に、ごくっと喉を鳴らして、牛乳を一気に流し込んだ。
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