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昼休み。
校内の食堂は人でごった返す。
大体の生徒は、食堂で昼を済ませ、その他は購買で買ったりが多いみたいだ。
俺と純吾も数少ない空席に腰を下ろし、昼ご飯を食べていた。
ただ、無一文の俺は純吾にカレーライスを奢ってもらった。
「おい、純吾。いいかげん雑誌読むのやめろよ。」
俺の向かいの席で純吾は雑誌を読むのに夢中になっている。
しかも、"イケメン大図鑑"って題名の怪しげな雑誌。
純吾らしいといえばそれまでだけど。
「いやぁ、ちょっと気になることがあってさ。」
「気になる?」
"これ"と言いながら俺の目の前に雑誌が置かれる。
よく見れば"喫茶店Gimmick"と大きく見出しが書かれ、5人のウェイターがポーズをとっていた。
「なんだよ、Gimmickの特集組まれてんの?」
いつもの俺なら全く興味はないけど、これからバイト先になるかもしれない店となれば話は別。
少しは情報集めとかなきゃ、マズいだろ。
俺はなるべく興味のないような素振りで問いかけた。
「この人、誰かに似てない?」
そう言いながら純吾が指をさしたのは、黒髪を無造作に後ろへ流し、緩やかな笑みを浮かべるイケメン。
この人が、誰かに似てる?
誰かって、誰だよ。
俺は首を傾げつつ、下に書かれてあるプロフィール欄を見た。
「……りょーすけ。…涼介?」
「そ、涼介って名前なんだよそのウェイターさん。」
待て待て、涼介って…え?
一気に頭の中が混乱してきた。
俺は雑誌に顔を近づけてまじまじと見つめた。
雰囲気は全く違う。違うんだけど、でも顔はなんとなく似てる。
しかも、名前が一緒?
「まさか、このウェイターが久吉…てこと?」
「最近、噂になってるんだよね。Gimmickの涼介って実は久吉涼介じゃないかって。」
いやいやいや、嘘だろ。
ほら世の中に自分と似てる奴は3人いるって言うじゃん。
「ありえないって。考えてみろよ、あの久吉がGimmickで働くと思うか?愛想振りまいていらっしゃいませー、キラッなんて言うと思うかぁ?」
「俺がなんだって?」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっ!!!」」
いつの間にか後ろに立っていた久吉に、盛大に驚いた俺たちは声をハモらせた。
慌てて雑誌を隠して苦し紛れの笑みを久吉に向けた。
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