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蓮の怒りは寸前まで昇っていた。
残念ながら俺は気が長い方じゃない。
テーブルを叩いて、鋭く睨んだ。
「てめぇら…いいかげんに―…!」
――バシャ!!
その瞬間、他の客の悲鳴が聞こえ周りがどよめいた。
髪の先からはポタポタと雫が落ちる。
…水を顔面にぶっかけられたと気付いたのは、数秒経ってからだった。
「…店内では静かに、だろ?」
口角を上げて嫌な笑みを浮かべたチンピラに蓮はギリッと歯を食いしばる。
…ナメやがって!!
我慢の限界を越えた蓮は拳を振り上げた。
…が、振り落とされる寸前で止められる。
「…お止めください。」
掴まれた腕を苛々した様子で振りほどいて、蓮は振り返った。
そこには漆黒の髪色をしたウェイター姿の男の人。
長い前髪で片目しか見えないが、綺麗な顔立ちであることは確か。
小さいウェイターが"オーナー"と口にした事から、この人はこの店のオーナーなんだろう。
「…なんで止めんだ!!」
「殴ってはいけません。」
「あ~あ。怒られちゃったねぇ~?暴力はいけませんよ?」
俺の顔を覗き込みわざとらしく言うチンピラ。
俺は睨むようにチンピラに視線を送る。
「こんな方達の為に、あなたの手を汚す必要はありません。」
「―…な!?」
しかし、オーナーの言葉は予想外なものだった。チンピラ共は面食らった様子で固まっていた。
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