865人が本棚に入れています
本棚に追加
/975ページ
だからって、ここになじめるかっていったら。
それはそれでまた、別レベルの話。
俺は女の子が逃げていった方角へ目を向ける。
言うまでもなく、もうとっくに彼女の姿はなかったけど。
幼い顔の女の子。
それは俺に、蜂蜜天使のライブに来ていたファンの子たちを連想させた。
ふと、足元に落ちている小さな手帳に目がとまる。
金網の隙間から、手を伸ばして拾い上げた。
深澤女子大学高等部2年3組
来栖若菜
表紙の裏側には2枚のプリクラ。
同じ制服ながら、天真爛漫な笑顔は学生証の写真よりも数割り増し可愛い。
しばらくながめた後、その落とし物を雑草の陰に隠す。
もし、あの子に俺の物語を聞かせたら。
一体、どんな顔をされるんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!