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「ほら、あった。八代将軍徳川吉宗。」
土井は嬉しそうにこちらに顔を向けた。
「分からない…。」
本当に頭の中に靄がかかって何も見えない。
私は頭を振りながらベッド上で胡座になり暫く目を瞑った。
「土井……。あの男は何者か?」
うっすらと目を開け土井に顔を向けた。
「大野のこと?」
徳子は横でその光景を不思議な思いで見つめていた。
『まるで主従関係だ。胡座がさまになりすぎだ。』
と、くすりと笑った。
「何者?って、クラスメートだよ。一年からずっと一緒のクラスだけど…?」
土井はベッドの下から不思議そうに私を見上げた。
「違う!!あの大野と何があったのかと訊いている。」
土井に一喝するように膝を叩いた。
「あの男が二週間前と言っていたではないか?」
「ああ……。」
土井の顔が妙な動きをした。
土井はちらりと徳子を見て、ベッドの縁まで近づいた。
「実は……。」
ひとつ咳払いして真顔をこちらに向けた。
「ひとつ下の学年にマリアちゃんと言うめっちゃ可愛い娘がいまして…」
また、土井はちらりと徳子を見た。
「何だか喉が渇いたな~ジュースが飲みだいの、土井。」
ゆっくりと徳子に目を向けた。
「……。何だ、その目は。ジュースを持ってくればいいんでしょ。」
徳子はプイと頬を膨らまし部屋を出ていった。
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