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土井が話終えるとちょうど徳子が現れた。
「面倒くさい事になっちゃったね。」
机にジュースの入ったグラスを三つ置いた。
私は徳子に視線を移しながらジュースを取った。
土井もジュースに手をかけて
「地獄耳だよ。」
と、一口飲んだ。
「パソコンオタクのヒデが良く大野に勝ったもんだ。って、学校中の話題だったんだぜ。」
「そうか。」
「でもそれっきりヒデは学校に来なかった…。本当に夏風邪だったの?」
私はベッドに座り上目使いで天井を見た。
平成のヒデの行動は分かったが、自己が誰なのか未だ分からない。
そして、徳子と目が合った。
「その髪型で学校に行けば。」
徳子がくすりと笑う。
鏡を覗くと何となく見慣れた自分がいた。
「暑くなくていいかもしれぬな。」
「何かあったらとしちゃんがお助けいたす。」
土井がゲラゲラ笑った。
「要らぬは。」
私は二人が帰った後、じっくりと日本史資料集なるものを読みだした。
私の家紋と徳川家の家紋が一緒である。
こうなると「徳川秀忠」になるのか?
まさか将軍家などあるはずかない。
しかも私が将軍になるのか?考えただけでも気が遠くなる。
思い出されるのは日々緊張しかない毎日。
目を瞑ると誰かに怒られている感じが蘇る。
突然起き上がると足でテレビのリモコンのスイッチ押した。
「400年以上前の慶長時代の貴重な文献が工事現場から発見されました。慶長は豊臣秀吉の…」
「慶長…慶長…元年お喜び申し上げます。」
太閤様か……
誰か偉い人に挨拶をした。
した。
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