分かる男

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開店と同時に数人の女子が教室に入って来た。 「まじ~っ。」 私たちの姿を見て爆笑しながら席に着いた。 「噂に聞いてたけど、かわいい~。」 メイド10人がボケっと突っ立たままだった。 「ああ~ヒデ先輩だ。あはははっ。」 携帯で写メを撮られまた爆笑された。 誰が注文を取るかでジャンケンをした。 負けたのは私。 土井に助けを求め顔を向けたが、ニヤっと笑うだけだった。 「ご、ご注文は如何されますか?」 「はぁ~。如何?だって。ヒデ先輩、キモイ。」 「キモイ…?」 「可哀想だよ。紅茶4つでお願いします。」 「畏まりました。」軽く一礼して、厨房に紅茶4つと告げた。 私は土井を捕まえて言った。 「キモイとは何だ?」 「気持ち悪い。だよ」 「だから言ったであろう。この姿は尋常ではないは。」 「そうかな~俺は可愛いと思うけど。いいから紅茶を運んで。」 「しかしだな…。」 「笑ってよ。」 仕方なく紅茶を運んだ。 「ヒデ先輩。後で写メを一緒に撮って下さいね。」 「私とか?」 「はい。マリアの言っていた通りの方だったわ。」 恥ずかしそうに笑った。 「そうか。ではまた。」 軽く一礼した後、顔がニヤケてしまった。 何者か分からぬが、こちらが恥ずかしくなった。 暫くすると、ゾロゾロと教室の前に人集りが出来た。 どうやら写メが出回ったらしく、化物見たさに人が増えて、老若男女メイド喫茶は凄く賑やかになった。 私は休憩も無くひたすら動いた。 サービスで写メも撮らせた。 おじいさんに 「これはどうなっているのかのう」 と、スカートをめくられた。 太ももや尻まで触ってくる男もいた。 「土井!!代わらぬかっ。」 「ダメ、だめ。」 「触るのだぞ。尻を!!しかも、気持ち悪い男にだ!!」 「大丈夫。大丈夫。」と、土井は言ってくるりと私を客席に向けた。 「青山くんを見て。完璧な接客。」 満面な笑顔で、オタク男数人を手玉に取っていた。 「ラブラブリー。愛情たくさん入れました。どうぞ。召し上がれ。」 青山はウィンクをした。 「うぉぉ~」 男たちは興奮の声を上げた。 「無理だ!!」 「はい。行った。」と、土井に冷たく背中を押された。
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