分かる男

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私は暫く接客を続け、教室の時計は午後2時を回った。 その頃になると客がまばらになった。 文化祭最後のパーティーは午後5時過ぎに始まる。 その前か最中かきっと大野の呼び出しがあるに違いない。 「はい、コーラ。」 「すまぬ。」 真夏の午後2時はとてつもなく暑い。 隣で土井が缶コーラの栓を開けた。 「マリアちゃん、帰っちゃったね。」 「……。」 私はコーラをゴクリと飲んだ。 「何でヒデなんだろうか?」 「知らぬ。」 「缶コーラ買いに下へ行ったら、ヒデのメイド写メ一年生に受けまくりだったぜ。ずるい。」 「代わるか?」 土井がこちらをじっと見た。 「このヒョロヒョロ感がいいのかな。何も考えてないところとか……。」 「でも、最近のヒデは大分感じが違うんだよな。隠してない?」 「何も…ないが。」 と、曖昧な笑顔を土井に向けた。 「その笑い方はヒデなんだよね。」 二人で缶コーラを一気に飲み干した。 「ああっ、土井。氷を貰ってきてよ。」 榊原が言った。 「ええ、ないの?」 「お前クーラーボックスを開けっ放しだっただろう。」 榊原がクーラーボックスの前で怒っていた。 「お…れ…?」 厨房の連中は土井を見ていた。 「分かったよ!!家庭科室から貰ってくるよ。もう…!?」 土井は慌てて教室を飛び出した。 その様子を見ていた大野が私のところに来た。 「4時少し前にここを出て、例の場所で待ってる。逃げるなよ。」 ふんと鼻で笑って大野は定位置に戻った。 一時間後か…。
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