20人が本棚に入れています
本棚に追加
大野の合図でひとりの男がこちらに向かって来た。
どうする?腹か、顔か、蹴りか、殴るか…。
相手は勢いよく殴りかけてきた。
それをスルリと避けて足を引っ掛けたら勝手に倒れ込んだ。
「あっ、悪い。」
引っ掛けるつもりが無かったのに、反射的にやってしまった。
「んだ!!その言い方!!」
立ち上がると無鉄砲に腕を振り回してきた。
これに殴られてもな。
体が軽く避けてしまう。
私は武術が下手でよく怒られていたのにな。
ひとりくらいは倒すか…。
無鉄砲に振り回す手を掴むと投げ飛ばした。
相手は地面に倒れて背中を押さえて唸っていた。
「一斉にやれよ。」
大野の声がとんだ。
これで、負けてやる。
一発、二発、三発と続けて殴られた。
やはり遣られるのは痛いな。
そろそろ倒れてもいいか。
誰に訊くわけでもなく呟いた。
かなり殴らさせてやった。
倒れそうになった時、背中に声が飛んだ。
「ヒデ!!」
振り向くと土井が走って来た。
「来るなと言ったはず。」
私の声など耳に入らず、土井は凄い勢いで大野たちに殴り込んだ。
計画が水の泡じゃ。アホが…。
私はふっと笑った。
「倒れるまでやりましょう。」
それが喧嘩です。
誰かが言ってたな。
「仕方ないの。」
私も土井と一緒に大野たちに向かっていった。
さすがに人数の差で体力負け、土井と私は夏草の上に仰向けに倒れた。
「そろそろ仕上げましょうか?」
大野の不気味声が聞こえた。
大野の靴がチラリと見えた。
その時、聞き慣れない声がした。
体が痛くて、顔が見えない。その声が誰だかわからない 。
「何してんだ?大野。」
「あっ、木下さん。なんでマリアちゃんまでここに。」
「こいつ、俺の妹って言ってなかった?」
「ええっ、いつから?」
「今年の春からだよ。親が再婚したんだよ。」
「ええっ、まじですか?」
よく見えないが、大野が焦っている。
木下さんとは誰か?
最初のコメントを投稿しよう!