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私はゆっくりと起き上り、自分の姿に笑いがでだ。
メイド姿で倒れていたのだ。
「土井のお陰だな。」
徳子は不思議そうに私を見た。
「土井。起きぬか。お前の好きなパーティーが始まってるらしいぞ。」
「…ええ…」
寝ぼけながら体を起こした。
「おお~ヒデ。無事だった。」
と、私に抱き付いてきた。
「土井のお陰で助かった。ありがとう。」
「良かったよ。ヒデ。」
土井はぎゅうぎゅうと私を抱きしめた。
「いっ、痛い。」
と、言いながら土井の背中をさすった。
「着替えてから体育館に繰り出すか?」
「おおっ~!!」
「でも、殴られるのは最後にしたいの。」
「確かに。痛い。」
「むちゃくちゃしてよく言うわ」
徳子が呆れた。
私と土井は足を引きずりながら夏草むらを後にした。
文化祭最後のダンスパーティーは夏休み前とあって凄い盛り上がりを見せた。
制服姿の生徒が学年入り乱れて騒いでいた。
私はぼんやりと体育館二階の客席に座っていた。
体が痣だらけで、顔もすり傷が少しあった。
このまま、ここに居るのか。
ここは嫌いではない。
むしろ住みやすい。
しかし、ひとは還らねばならない場所があると思う。
必ず誰かに必要とされる場所があると思う。
私はここではない。
ここでは……。
徳子が私に気付き下のフロアから手を振った。
土井は傷が浅いのかはしゃぎまくっていた。
「静かだね。」
隣に榊原が腰を降ろした。
「大野とやったんだって。」
「すまなかった。片付けの手伝いもしないで。」
榊原は一階で配っているジュースをくれた。
「いいよ。まさか本気で大野を相手にすると思わなかったから、驚いた。」
「そうだな。私も土井が来なかったら相手にするつもりはなかった。」
「調子いいからね。あいつは。」
榊原はジュースを飲み干し紙コップを潰した。
「ところでさ…。ああ…いや何でもない。」
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