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「ん…。」
レッジは鳥の囀りで目を覚ました。彼は朝の目覚めは良い方で、いつも朝は早い。
彼は時計に目をやる。
時計はもうすぐで6時40分を指すところであった。
少し、ベッドの上でぼーっとした後、立ち上がる。
顔を洗い、手早く着替え、1階のリビングへ降りる。
「おはよう。」
誰もいないのに、誰もいないってレッジ自身分かっているはずなのに、いつものように挨拶をする。
レッジは寂しそうな表情をしながら
「行ってきます。」
と言った。誰もいないこの家で。
彼が向かっている先は友人のシエナの家だ。
レッジの家には誰もいない訳では無かった。レッジには妹のシルフィーがいる。元気一杯で現在住んでいるリムの村でも良く子供達の面倒を見ていて、みんなからはお姉ちゃんと慕われていた。
おっちょこちょいな部分があるが…。
兄のレッジと妹のシルフィーは仲良く過ごしていた。甘えん坊のシルフィーは良くレッジの横で寝ていた。レッジも寂しがる妹を見て快く承諾するくらいだ。
レッジとシルフィーには両親が居ない。
行方不明なのか、死んでしまったのかどうかすら分からない。
存在すら覚えていないのだ。容姿・声も何一つ覚えていない。
レッジとシルフィーは10歳以降からの記憶しかない。それまでの記憶は綺麗サッパリと抜け落ちたように無いのだ。
でも、今まで2人で何とか頑張って来れた訳だし、これからも何とかなるだろうという事で頑張ってきた。それでも、やはりシルフィーは寂しがる。
「何でシルフィー達には両親が居ないんだろうね…?」
と。
慰める意味でも、頼れる兄になるという意味でも、レッジはいつもシルフィーの側にいた。
これをシスコンと言うのかどうかは別として…。
もう兄妹関係無く結婚すれば良いのにと村の人々は冗談混じりに言う。
流石にそれは無いですよ。と笑いながら返すレッジだが、シルフィーはその度に顔を赤くする。
そんなレッジにとって大事な存在のシルフィーだったのだが…。
3カ月前に行方不明になってしまった。
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