第0話 始動

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誰もが泣きたくなった。無意味な死だったから尚更だ。 いや…無意味なんかでは無かった。あのまま2人が生きていれば…。 いや、そんな事を考えるのはよそう…。こんな事を考えたところで…。 「ふぅ…。」 ウェインはため息をつく。この場を打破する方法が見つからず困惑している。 てか…俺も泣けたらどれだけ幸せな事か…。 「うっく…ひっく…。」 シエナが悪いはずが無い。あの戦争に悪い奴なんて居なかった。全ては思想の問題。 人間という生き物はどうしてこうも複雑なんだ。一度持った考えなんてそうそう変わるものでは無い。 そんな中行われた戦争。 全く持って不毛だった。この戦争に勝者なんているはずがない。全員が敗者だ。俺達も敗者だ。大事な人を亡くしたのだから。 それでも俺達は生きているのだ。 消えなかった命。残っている命。 だから俺達は生きていかなくちゃならない。必死に生きていくしかない。例えそれが辛い事であっても。 人間はそうやって生きていく。そんな生き方をしながら次の世代へ繋がっていく。そして願う。 次こそ幸せでありますようにと。だから俺はこの言葉が正しいとも言い切れないが、 「生きよう。2人の為にも。そして、その子のためにも…。」 その子とはシエナが身ごもっている子の事である。例え辛くとも、この子を巻き込む理由なんてどこにも無い。 「…はい。」 シエナはまだ泣いているが、納得したのかフラフラしながらも立ち上がった。 「生きます…。この子のためにも…。」 それがシエナの決意だった。 「じゃ、帰るか。」 そうして帰ろうとした時だった。 ザッ…。 俺達の目の前に人間が2人立っていた。 「…!!」 俺はその2人を見て驚愕した。 それは他の奴らも例外じゃない。 当然… 「…あ…あぁ…!!レッジ君…。シルフィーちゃん…!!生きていたのね!!」 シエナも例外では無い。しかも、2人の名を呼んだ。知っている人物なのだ。いや…知っているどころか…。 「どういう事だ…?」 墓に記されている名前が… レッジ=アグリス シルフィー=アグリス なのだ…。つまり、俺達が目にしているのは… 死者…? いや…そんな事があるのか…?そんなありえない事が…。
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