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誰もが泣きたくなった。無意味な死だったから尚更だ。
いや…無意味なんかでは無かった。あのまま2人が生きていれば…。
いや、そんな事を考えるのはよそう…。こんな事を考えたところで…。
「ふぅ…。」
ウェインはため息をつく。この場を打破する方法が見つからず困惑している。
てか…俺も泣けたらどれだけ幸せな事か…。
「うっく…ひっく…。」
シエナが悪いはずが無い。あの戦争に悪い奴なんて居なかった。全ては思想の問題。
人間という生き物はどうしてこうも複雑なんだ。一度持った考えなんてそうそう変わるものでは無い。
そんな中行われた戦争。
全く持って不毛だった。この戦争に勝者なんているはずがない。全員が敗者だ。俺達も敗者だ。大事な人を亡くしたのだから。
それでも俺達は生きているのだ。
消えなかった命。残っている命。
だから俺達は生きていかなくちゃならない。必死に生きていくしかない。例えそれが辛い事であっても。
人間はそうやって生きていく。そんな生き方をしながら次の世代へ繋がっていく。そして願う。
次こそ幸せでありますようにと。だから俺はこの言葉が正しいとも言い切れないが、
「生きよう。2人の為にも。そして、その子のためにも…。」
その子とはシエナが身ごもっている子の事である。例え辛くとも、この子を巻き込む理由なんてどこにも無い。
「…はい。」
シエナはまだ泣いているが、納得したのかフラフラしながらも立ち上がった。
「生きます…。この子のためにも…。」
それがシエナの決意だった。
「じゃ、帰るか。」
そうして帰ろうとした時だった。
ザッ…。
俺達の目の前に人間が2人立っていた。
「…!!」
俺はその2人を見て驚愕した。
それは他の奴らも例外じゃない。
当然…
「…あ…あぁ…!!レッジ君…。シルフィーちゃん…!!生きていたのね!!」
シエナも例外では無い。しかも、2人の名を呼んだ。知っている人物なのだ。いや…知っているどころか…。
「どういう事だ…?」
墓に記されている名前が…
レッジ=アグリス
シルフィー=アグリス
なのだ…。つまり、俺達が目にしているのは…
死者…?
いや…そんな事があるのか…?そんなありえない事が…。
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