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え…?
俺が朦朧とする意識で辛うじて見えた視界。
そこには。
「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
自分でも情けない声を出していただろう。目の前には息絶えたみんなの姿があった。目を見開き何も見ていない。地面はみんなの血の赤が残酷で、なのに美しく感じる程に溢れ…
俺も同様であった。自分の腹部に手を当てる。ヌルッとした感触となま暖かさが非常に不快な気分にさせる。
力が入らない…。俺もこのまま…死んでしまうのだろうか…。
不意に涙が出てきた。何故…?
答は簡単だ。
怖い…。怖い怖い怖い怖い怖い怖い…!!
死ぬのが怖い!!
死にそうになりかけた事なんていくらでもあった。でも、その時は世界を救うのに必死だったからそんな事も考える余裕も無かったのかもしれない。
あの時…全てが終わったんじゃ無かったのか…?世界が救われて終わったんじゃ無いのか…?
「く…ぅっ…。」
か細い声が聞こえた。
「…シエナ?」
彼女も同様に深い傷を負っていた。それどころか貫通してしまっている…。
苦しいのだろう。顔をしかめていた。苦しそうな表情だ。
シエナの側にはレッジとシルフィーが立っていた。
その表情を見て驚いた。
これでもヘラヘラしているのならば偽物か精神操作を疑った。
なのに…。
「…すまない。みんな…シエナっ!!」
「ごめんなさい…。ごめんなさいっ!!」
泣いていた…。嘘泣き…?いや、違う。この泣き方は本物だ…。かつてのレッジとシルフィーの謝罪に良く似ている。
何で…。一体どうなってるって言うんだ…。
てことはこれが彼らの意思でやっていると言うのか…!?
馬鹿な…そんな筈は…。
「シエナ…!!ごめんっ!!」
途端にレッジは持っていたナイフをシエナの首に突き立てた。
「あ…が…。れっ…ん…ひ…ひ…へ…。」
首を刺されて平気な人間など居ない…。
言葉にならない言葉を発しながらシエナも息絶えた。
悪夢だ…。
これを悪夢と言わずに何と呼べばいい…。
恐怖と絶望で何も考えられない。取り残されたのは俺1人。
狂っている…。この世界は…!!
まるで平和を拒絶するかのように、絶望を楽しんでいるかのように目の前まであった平和が失われた。
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