episodeⅠ:対象

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教科書を受けとり、翔はとりあえず安心したようにため息をついた。 ……そんな不安なら端っから教科書買えっちゅーの 「じゃあ、そのうちいつか返すから」 「ちょ、いつかじゃなくて次の時間には返しなさいよ!」 「まぁ覚えてたらね~」 チャイムが鳴り、翔はひらひらと手を振って教室を出て行った 翔はいつかでよくても、あたしも数学の次は英語なんだからね もう…… 一年生のときは同じクラスだった翔は、今は別のクラス 文理選択でクラス替えがあり、私は文系の3組、翔は理系の1組に別れた ちゃっかり頭もいいようで、理系のトップクラスに入っているというのが気に入らない 『実際私だって理系だったら、翔と同じクラスだったんだから!』 『はははっ馬鹿なじじいには無理だって』 『なんですって~?』 こんなやりとりを何回繰り返しただろう 元々女の子らしいとはいえないこの性格のせいで、翔は私のことをじじいと呼ぶ 確かに女の子らしくはないけど、ちょっと酷くない? それでも翔をどうしても憎めないのは、 翔は私の好きな人だから
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