日記:0

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始めのうちは文句たらたらの生徒も多いが、入学して2年も経てば、すっかりこの制度に慣れてしまう。 電車で通学する学生は、早朝登校のお陰で通勤ラッシュは勿論、痴漢に遭遇する事が無いし、 朝からぴかぴかに磨きあげられた校舎は、築数十年の味わいは残しながらも、頬擦りしたくなる様な美しさを保っている。 理不尽な制度なら、直ぐにでも無くなってしまうだろうが、創立以来続く位だから少なからずメリットはあると言う事だ。 「長沼先輩、咲っち先輩ご機嫌よう。」 「はい、ご機嫌よう。」 「ご機嫌よー。…って。 またうちだけあだ名…。」 「それはあんたが気さく過ぎるから! 先輩の威厳とかまるで無いじゃない。」 一歩廊下へ出れば、既に掃除を始めている下級生達が廊下の端に寄って挨拶の言葉をかけてくる。名札のラインが異なるので、その上下関係は極めて明解だ。 長沼は、正に最上級生という貫禄でもって廊下を颯爽と歩いて行くが、その隣を行く咲子は何ともナメられたもので、咲ちゃんだの、咲っちだのと後輩からもマスコット扱いだ。 中等部に入った頃は、長沼の様な格好いい先輩を目指していた筈なのだが、一体何処で間違えたのだろうかと咲子は思う。
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