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咲子は頬をむくれさせたまま、ぴょんぴょんと跳び跳ねて廊下を行く。その様は、まるで愛らしい羊の様で、それが益々マスコット扱いに拍車をかけているのだが、彼女はそれを知らない。
「咲子、今日暇?」
「何でぇ?」
「何でぇ…って…。
今日、梨園会休みじゃん?
折角だから何処か行きたいなぁって。」
「あぁ…うん。いいね。」
「やった。」
校舎のちょうど真ん中で一際存在感を放つ螺旋階段をリズム良くとんとんと一段抜かしでかけ降りながら、他愛無い話で盛り上がる。
三階から一階へと繋がるこの階段は、見栄えは最高だか、降りる時専用だ。長沼曰く、とぐろ巻いてる分、上りのキツさが半端ない…だそうだ。咲子もこれには概ね同意である。
梨園会と言うのは、俗に言う生徒会で、長沼が会長で咲子は議長だ。やってる事は他校とそう変わらない…と本人達は思っている。
茶色のワンピースをふわりふわりと膨らませながら階段を降りれば、すっかり忘れていたポケットの何かが、カサッカサッと音を立てた。
「あ…フリマ。忘れてた。」
「フリマ?」
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