日記:0

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急に立ち止まって呟いた言葉を、振り向き様に鸚鵡返しする長沼に、咲子はポケットの中にあるチラシを広げて見せた。 「フリマがね、あるんだって。 何か面白そうかもって思って。」 「フリマねぇ…行った事無いわ。 咲子はあるの?」 「無い。」 「私も無い。でも、興味はある。」 「じゃあ、決定!行こう!」 階段を降りきった咲子は、ポケットにチラシを突っ込むと、先を歩く長沼をひらりと追い越して脱靴場へ走る。 上履きを革靴に履き替えると、がしゃんがしゃんとバケツの音を立てながらスキップで中庭に出た。 外は、何処までも爽やかな朝の日射しが降り注いでいて、とても心地好い。中庭の緑には、庭掃除の学生が撒いた水がキラキラと反射している。 「長沼ー! 先に茶室行っちゃうよー!」 振り返って長沼に手を振れば、自由奔放な娘を持った母の様な顔をして、「はいはい、今行くよ。」とあしらわれた。 咲子は、初フリーマーケットに何故か夢中で、どうやって行こう、何が置いてあるのかな…と楽しい想像で頭が一杯だった。
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