記憶-私という認識-

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  明日佳(あすか)。 私が授かった、名前というもの。 気付いたらこう呼ばれていたから 覚えたまでの事。 最初の記憶は、 たくさんの菜の花だった。 一面を黄色に染める菜の花は 私の背丈より高く、 自分がどこにいるのかさえ 教えてはくれなかった。 あーちゃん。 私が授かった、愛称というもの。 気付いたらこう呼ばれていたから 覚えたまでの事。 菜の花を千切り捨てる私を 不意に抱き上げたのは 私の初めて愛した人。 青空に負けないくらい笑う 大きくて温かい人。 「お父さん見てっ!」 手の平いっぱいの黄色に 命がある事を教えてくれた。 「あーちゃん、そんな事したら お花さん死んでしまうよ?」 大好きな父と行く菜の花畑が 私は大好きになった。 これが私の最初の記憶。 それ以前の記憶は、無い。  
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