記憶-私という認識-

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  私はニ月に生まれた。 勿論その時の記憶なんてないが、 父は仕事で不在だったから 母は祖母に見守られ 私を出産したらしい。 標準よりはるかに小さく ほとんど痛みもなかったと 母は言っていた。 そんな私も二歳になっていた。 暑かったかどうかはわからないが 夏の終わり、 しばらくいなかった母の帰宅と共に いつもの部屋に知らないものが来た。 父と母はいつも「それ」に近付いては ニコニコしていた。 (あれは何だろう‥) 父と母が私をほったらかしにする事が ただただ気に入らなかった。 私は「それ」の正体を暴くため ズケズケと歩み寄った。 それは、私と同じような形をした 生きているものだった。 (まずい‥) 私が「それ」に対して初めて抱いたのは 嫉妬という感情だった。 (私のお父さんとお母さんをとられる!) 要塞のような囲いに守られた「それ」は 母の手で地面におろされた。 毛布でグルグルまかれた「それ」は あーとかうーとか言うだけで あまり動かなかった。 「あーちゃんもお姉ちゃんだね」 父と母が笑う理由が 私にはさっぱりわからなかった。 小さいながら私が理解した事は 「それ」が弟である事ではなく、 「それ」が自分より弱い事だった。 早く排除しないと 私の世界が奪われてしまう。 私は「それ」を消そうと思った。  
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