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それは私が三歳になる頃。
私の母には弟と妹がいた。
「けん兄ちゃん」と呼ばれる母の弟。
「みーしゃん」と呼ばれる母の妹。
「けん兄ちゃん」には息子がいた。
この時は一人だが後にもう一人生まれ
息子が二人。
奥さんは優しくてしっかりした
姉さん女房だった。
「みーしゃん」には娘が一人いた。
私の二つ下で、
後に私の人生を変える娘だ。
「みーしゃん」に旦那はいなかった。
この三家族が集まる事が
我が家では恒例のイベントだった。
このイベントの日、
私は衝動にかられてしまった。
「あーちゃんっ!何やってんのっ!!」
私の記憶にあるのは
母に叩かれた事だけだ。
しかし、この日のビデオが残っていて
私の犯行はしっかり映っていた。
私はスヤスヤ眠っている「それ」を
しばらくじっと見つめ、
「それ」の顔におもむろに
クッションを乗せると
その上に座って跳ねた。
「それ」は声もあげなかった。
勿論すぐに叩かれた私の作戦は失敗。
「それ」は変わらず我が家にいた。
誰も私を見ない。
皆「それ」に夢中。
「あーこを見てっ!ねぇねぇ見てっ!」
ビデオの私はずっとこう言っていた。
この頃から母が厳しくなった。
父は相変わらず甘かったから
私は父が大好きだった。
「お母さん嫌っ!お父さんがいいっ!」
そう言って毛布を抱えて、
玄関で父の帰りを待った。
父は帰るとスーツのままで
私を寝かしつけてくれた。
「それ」がいる事に慣れてきたある日、
「それ」がいなくなった。
「あーちゃん、お見舞い行こうか!」
母が私の手を引いた。
(おみまい‥?)
訳もわからず向かった先に
「それ」はいた。
小さい私には管に繋がれた「それ」は
痛々しく衝撃的だった。
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