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私は保育園で雪女と呼ばれていた。
生まれつきつり目で
髪を腰まで伸ばしていたからだ。
母からワンピースを着せられる事が多く
よくスカートをめくられていた。
女の子はいつも泣いたり怒ったり
していたが、私は何とも思わなかった。
そんな私にも
好きな人がいた。
タクヤ君という男の子と
私は両思いだった。
結婚しようといつも言っていた。
私はなぜかモテた。
確かに他の女の子からは浮いていた。
私を好きだと言ったショウ君という男の子は
毎日お昼寝の時に私の隣りで寝ていた。
私の初キスを奪ったのはその子だった。
保育園のグラウンドには鶏小屋があった。
皆が遊具で遊んでいる間、
私はその鶏小屋の前にいつもいた。
「何してるの?」
声をかけたのはショウ君だった。
「鶏みてるの」
しばらく横で黙っていたショウ君が
突然口を開いた。
「タケノコはえてるっ!」
指差した先には小さなタケノコが
一つだけはえていた。
私は、タケノコを知らなかった。
「これ、ほしい?」
そう聞くショウ君の目は
「はいと言え」と言っていた。
頷いた私の横でショウ君は腕まくりをした。
ショウ君が張り切ってタケノコを握り
引き抜いた瞬間、
目の前が真っ赤になった。
私が覚えているのは
泣きわめくショウ君と皆の悲鳴。
地面にはたくさんの血と
ショウ君の指が何本か落ちていた。
ショウ君は包帯でグルグル巻きの手を
私に見せて「全然平気」と笑った。
私はその日からショウ君が嫌いになった。
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