第2話

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職員室の青木先生の机には、束になったプリントがわかりやすく置かれていて、すぐに見つけることが出来た。 私はプリントを胸の前で抱きしめるように持ち、職員室を出ると2階に上がる階段に差し掛かった。 「わっ!」 「うわっ。」 上から下りてきた人とぶつかり、プリントを束ごと落とし、私の周りにバラまいてしまった。 …あーもう、めんどくさい。 「…すみません。」 ぶつかった男子生徒は、私を見ることなく、一言謝ってから、散らばったプリントを集めだした。 「あ、いや…。私もぼーっと歩いてたんで…。」 集めて整えたプリントをこちらに差し出され、私は同じように整えた自分の手に持っているそれに重ねた。 「ありがとう。」 「いえ。」 私とぶつかった男子生徒は、縁なし眼鏡をかけ、その上から、顔を隠すかのように長い前髪をおろしていた。 見ない顔だな。1年か2年かな…。そんなに長い前髪だとまたぶつかっちゃいますよ…。 などと考えている内に、正面に立っていた私をさっと避けて行った。 なんだあいつ。感じわるーい。 あ、いやぶつかったのは私か。 拾うの手伝ってくれたし。 うん、良い人…かな? 私は教室の前まで戻り、引き戸を開けると、すぐ目の前に青木先生が立っていて、ばっちり目が合った。 「おかえり。ありがとな。んじゃ、それ配って。」 …へーい。 .
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