決意

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「ここは…?」 裕哉は周りを見回した そこはどこか広い平原のど真ん中だった 「おーい誰かいないかー!」 裕哉は叫んでみたがただ響くだけで返事なんてなかった 「ひっく、あ、ああ…」 「誰かいるのか?」 裕哉は声のする方へ駆け寄った そこには泣きじゃくる小さな女の子と赤く染まった剣と男の死体があった 「君、どうしたんだ?」 「私、私…」 女の子はひっくひっくと泣きながらなんとか言葉を言った 「私…が…殺したの…」 「そうか でも一体なんで?」 「国の…国の為なの…でも殺したくなんてなかったの」 「そうか、じゃあ国の為に戦う事を辞めなよ そうすれば楽になるだろ?」 「駄目…なの 私が戦う事を…辞めると…たくさんの人が死んじゃうから…」 裕哉はそれ以上何も言えなかった…いや多分この女の子には何を言っても苦しめてしまうだろう 「でもそんなのって…!」 裕哉はただイライラとそう言った こんな小さな女の子さえ戦って殺して苦しんで… そんな女の子の姿に昔の自分を見た気がした 理不尽ないじめや暴力を受けて独りこうして涙したことは何度となくあったからかもしれない だがそんな自分よりもこんな女の子が人を殺さなければならないとはどれ程辛いことなのだろう 「決めた…俺が君の力になるよ 何の力もないけどただ君の力になりたいんだ」 女の子は裕哉に抱きついた 「ありがとう、お兄ちゃん これからよろしくね」 「ああ!…そう言えば名前言ってなかったな俺は遠山裕哉って言うんだ」 「私はエレナって言うの」 「えっ?」 「これから私のこと守ってね裕哉お兄ちゃん」 女の子がそう言うと目の前がぐらついて何も見えなくなっていった…
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