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「お嬢様。そこにいらっしゃいましたか。」
カミールは微笑みながら、そう小さく言った。
その声に、メイドたちは一斉に振り向く。
皆の視線は、カミールが指差す棚へと集まったのだ。
マリアの心臓はドクリと鳴る。
手には汗を握っている。
このまま黙りを決めていても、いずれは近づいてきて捕まる。
何か方法はないものか……。
マリアは再び、長い髪を指に巻き付けた。
「今出てくれば、国王様には告げ口しませんよ。自分から出てきて下さい。」
カミールは言うなり、また微笑む。
だが口から上は全く笑っていなかった。
(あの七三デコ、上から目線でむかつくわ!絶対に一泡噴かせてやるんだから!)
マリアは棚を通してカミールを睨み返す。
両者は棚を通して睨み合ったのだった。
それから暫くの沈黙。
その後、先にそれを破ったのはカミールであった。
「まったく……。困ったものですな。」
階段を登り、いよいよ執事カミールが迫ってきた……。
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