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「貴女は自分のご身分が分かっていらっしゃいますか。」
言いながら棚に背を向け、寄りかかる。
そして眼鏡の位置を中指で直した。
「貴女は仮にも王女【マリア=ヴィルヌーヴ】様なのですよ?つまり貴女は、ヴィルヌーヴの14戦士の一人、【聖ジャンヌダルク】様の血を引く唯一の女性なのです。」
マリアは黙ってカミールの説教を聞いていた。
その言葉が重くのしかかる。
今にも叫びそうだった。
しかし、カミールの説教は終わらない。
彼は相変わらず冷酷な表情とは裏腹に、また諭すように言うのだった。
「世界の平和と秩序の維持を任されているのが貴女様なのです。そしてそれを実現するのは、並大抵の努力では得られません。悪戯をしてる暇があったら……」
「悪戯じゃないわよ!!」
我慢出来なくなったマリアは、突如そう叫ぶ。
胃の中が沸々としていた。
これが腸が煮えくり返るっと言ったやつか。
マリアは怒りながらも、そう思った。
「あたしは……。あたしはね……!」
唇が震える。
手足が強張る。
「あたしはっ!!」
マリアは棚の陰から飛び出した。
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