prologue

3/4
前へ
/6ページ
次へ
ゆっくりと目を開けた。 眼下に見えたのは、小さな車と人の群れ。 ―ここは高層ビルの屋上だ。 周囲に人は見えず、茜色をした秋の空と同じようなビルが並ぶ風景が回りを囲む。 吹き上げる風が、制服の青いタータンチェックのスカートをひらりとはためかせた。 そこでため息をゆっくりと吐きながら、空を眺める。 じっと見ていると、視界の片隅でキラリと何かが光った。 一番星だった。 私はなんだか嬉しくなって、星に手を伸ばす。 「最後に見たのが君で嬉しいよ」 久しぶりに、純粋に「美しい」と思えた。 それが何よりも嬉しかった。 その美しいという綺麗な感情と共に、私はこの世界から離れられる。 ありがとう、一番星。 ありがとう、空。 「さようなら、人生」 ビルのフェンスを乗り越えて、私は空中へと踏み出した。 途端に引力が体を支配する。 こんな終わりも、「悪くはない」。 ―しかし、その引力はすぐに消えて無くなった。 代わりに何かに包まれたような、変な暖かさが私の全ての感覚を支配している。 きっと今、黄泉の国にでも送られてるんだろう。 そう考えて、私は意識を捨てることにした。 これで、「終わり」だ。 改めて、さようなら。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加