★始の章

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明るかった青空の日は落ち、ポツポツと街に明かりがつきはじめた頃。 『うわ……。折らずに使いきったよ。』 それは、ただただ一心不乱にシャープペンシルの芯を削り続けた結果だった。 机の上は、真っ黒く塗り潰された紙がのっているだけ。 でも、何故か私の心は達成感で満たされていた。 『はは、何してんだろう。 うぅーーん。疲れたなぁ。』 ガラガラ ガラ。 私は大きく伸びをしながら、重たい窓を開けて新しい外の空気を肺一杯に吸い込んだ。 家の前の土手沿いに咲く桜の花が、優しい光に照らされて綺麗に輝いていた。 『綺麗だなあ、もうすぐ満開かな?』 私は不意に桜に手を伸ばした時に初めて、着付け教室に行った恰好のままだった事に気が付いた。 『また怒られちゃうな。まぁ、良いか。』 私は幼い頃から着物が好きだった。 確かに洋服よりも不便な所が多いけど、着物を来ていると背筋がしゃんと伸びるような気がする。 それに、何処か懐かしい感じがするのだ。 スーッと春のそよ風が彼女の頬を撫でてゆく。 『んーー!風が気持ちいい。』 心地よい春風につられて、おもむろに窓から身を乗り出した。 その時だった。 見えない何かに、背中を押されたのは。
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