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「……ッチ。
てめえ、軽々しく名前を出すんじゃねぇ。
それに、俺はまだコイツに何もしちゃいねぇよ。」
「ふうん、まだ……ね?
でも、その子泣いちゃってますよ?
ちょっと目を離した隙に居なくなったと思ったら女の子捕まえて。
いくら土方さんが色男でも、いきなり外で無理矢理は……ちょっとね。」
陽気な雰囲気の青年は、ありえないとでも言うように首を振りながら肩をすくめる。
「ちょ、ちょっと待て!!
別に俺はコイツに何かをしようとしてた訳じゃねぇ!」
「はいはい。
でも、だってさっき土方さんが"まだ"って言ったんですよ?
………ねぇ?」
『…っ、え?』
突然話を振られた彼女は、固まってしまった。
全くをもって、状況が理解出来ない。
ーーそもそもこの人たちはだれ?
「……そういえば君はなんで土方さんに泣かされていたんですか?」
『そ、それは……』
いいあぐねていると…
「……俺が怒鳴ったからだろ」
少しバツが悪そうに黒髪の彼が答える。
「…………」
"土方"と呼ばれた彼の言葉を否定する事も出来ずに俯いていると……
「あーぁ。もしかして……土方さん、またやっちゃったんですか?
顔は良いけど、口の悪さも天下一なんですね。
君も、このヒトにどんなに酷いことを言われても気にしちゃいけませんよ。」
"総司"と呼ばれた男は彼女を土方の側から引き離し、汚れた着物の裾を叩いてくれた。
「おい総司、おめぇ…ちっとは黙っとけ。
…おい、てめぇ。名前は?」
彼も自ら身を起こし、あちこちに付いた土を払いながら彼女に訊ねる。
『私ですか?
私の名ま………うっ、っ。』
口を開いた瞬間。
いきなり強烈な頭痛が襲いかかり、私は意識を失った。
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