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ーやぁ、とぉーっ!
やぁ、とぉーっ!……エイッ!
遠くから聞こえる掛け声で、目をゆっくりと開いた。
……が、そこに見えるのはいつもの見慣れた真っ白の天井ではなく、木目が美しい見知らぬ天井だった。
『痛ててて。』
微かに痛む頭を抑えながら、いつのまにか寝ていた布団から起き上がる。
『はあ。ここは……どこなんだろ?』
「屯所。とは言っても、八木さん家なんですけど。」
『!?』
いつの間にか声に出ていた独り言に答えてくれたのは、笑顔が似合うあのヒトだった。
「体調は大丈夫ですか?
名前聞いた途端、いきなり倒れちゃうから……。本当にびっくりしたんですよ!」
困ったような表情を浮かべる彼。どうやら本気で心配してくれたようだ。
『ありがとうございます。おかけさまで体調は良いです。
見ず知らずの方に迷惑をかけてしまって、すみません。』
「いえいえ。ねぇ!それよりも、貴女の名前を教えて下さい。」
好奇心丸出し、といった様子で彼は訊ねてきた。
『私の名前は、雪と言います。』
「雪さん、ね。私は総司と言います。よろしくお願いしますね。
…あっ、貴女が目覚めた事を近藤さんたちに報告してくるので、ここで待ってて下さい!」
そう言うやいなや彼は廊下に出ていった。
雪が口を挟む隙もない。
ーー総司さん、珍しく着物姿だったなぁ。
あの人も着物が好きなのかな?
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