新年

11/12
前へ
/238ページ
次へ
雪が土方と共に廊下を歩いていると、前方から見知らぬヒトが歩いて来る。 『土方さん………あの方達は?』 土方の袖を後ろから軽く引っ張って、小声で尋ねる。 「あぁ、まだお前は知らないんだな………。 おい!松原、武田、ちょっといいか??」 すれ違いざまに土方は二人を呼び止める。 「はい、なんでしょうか副長?」 熊のような体躯をしている松原。 後に、親切者は山南と松原と言われたように、見た目とは裏腹に温厚な性格の持ち主だ。 「……少々急いでいるので、手短にお願いします。」 こちらはかなり小柄な武田である。つり目で常に扇子を片手にしており、言動も少々荒い。 二人の態度は正反対だ。 「………、お前らは隊務でいなかったからな。 まだ俺の小姓を紹介してなかったな、と思ってな。ほら………」 土方は武田の態度への怒りを何とか抑えながら、声をかけた目的を伝える。 『じょ、女中兼小姓をしています。 市村 雪と申します。宜しくお願いします。』 雰囲気に気圧されながらも、雪は二人に向かって頭を下げる。 「ふふっ、可愛らしいね。 私は松原忠司と言います。よろしく。」 優しく微笑みながら挨拶をした。 一方……… 「フンッ。武田、武田観柳斎。」 笑いもせず、雪を上から下まで一瞥したあと足早に立ち去る武田。 「………ったく、なんだよあいつ。」
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

880人が本棚に入れています
本棚に追加