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雪が土方と共に廊下を歩いていると、前方から見知らぬヒトが歩いて来る。
『土方さん………あの方達は?』
土方の袖を後ろから軽く引っ張って、小声で尋ねる。
「あぁ、まだお前は知らないんだな………。
おい!松原、武田、ちょっといいか??」
すれ違いざまに土方は二人を呼び止める。
「はい、なんでしょうか副長?」
熊のような体躯をしている松原。
後に、親切者は山南と松原と言われたように、見た目とは裏腹に温厚な性格の持ち主だ。
「……少々急いでいるので、手短にお願いします。」
こちらはかなり小柄な武田である。つり目で常に扇子を片手にしており、言動も少々荒い。
二人の態度は正反対だ。
「………、お前らは隊務でいなかったからな。
まだ俺の小姓を紹介してなかったな、と思ってな。ほら………」
土方は武田の態度への怒りを何とか抑えながら、声をかけた目的を伝える。
『じょ、女中兼小姓をしています。
市村 雪と申します。宜しくお願いします。』
雰囲気に気圧されながらも、雪は二人に向かって頭を下げる。
「ふふっ、可愛らしいね。
私は松原忠司と言います。よろしく。」
優しく微笑みながら挨拶をした。
一方………
「フンッ。武田、武田観柳斎。」
笑いもせず、雪を上から下まで一瞥したあと足早に立ち去る武田。
「………ったく、なんだよあいつ。」
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