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夜道を、一人の少年が歩いていた。
その道に街灯は殆どなく、辺りはひっそりと息を潜めているようだ。
気味の悪い静寂の中、彼はある光を頼りに歩き続ける。
一際目を引く、自動販売機の明かり。
少年はその明かりの前で立ち止まり、小銭を投入し、目当ての炭酸飲料のボタンを押す。
ガコン、という音が虚しく響く。
彼は缶を手に取り、プルタブを空ける。と同時に、小さな破裂音が聞こえた。
飲み口に口を付けた後、数回ほど喉が動く。爽やかな味わいと、弾ける感覚が彼の味覚と心を潤した。
「ぷはぁ……っ」
呟きと共に、少年の顔が綻ぶ。
170前半ほどの身長、少し細い身体の線、健康的な肌の色、ワックスで整えられたセミロングの黒い髪、切れ長の目、シャープな顎。
精悍な顔付きも、今は台無しになっている。
東雲悠斗。
それがこの少年の名前である。
地元の県立高校への進学が決まった翌日である今日、悠斗は中学時代の友達と朝から遊び呆けていた。
友達と別れる頃には、辺りは既に暗かった。
(まあ、門限にはまだ間に合うだろうな……)
呑気な事を考えながら、悠斗はズボンのポケットからあるものを取りだした。
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