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「正解だ……そしてキース君の行動は、これまでの裁判例から判断して、憲法41条違反及び王国刑法187条前段違反になることは、恐らく間違いないだろう」
伯爵が何気なく行っているのは、定義を具体的事例に基づいて検討することであり、これを当て嵌めと称すことが多い。
今回のケースで考えると、遺跡の探策は『個人の昔話及び回想、又は技術、文化等の継承』の範疇ではないし、『個人であるか否か、又は学術的であるか否かを問わず何らかの方法をもって学習あるいは研究すること』が『歴史』の定義として認定されているのなら、ボクの行動は憲法41条違反として恐らく間違いない、というか間違いないだろう。
そして、憲法41条に違反したという事は、その処罰を委任された刑法187条違反にもなる。
「捕まれば、死刑となる」
そしてこういう結論になるわけである。
伯爵の発言を、ボクはさも当たり前のように聞いていた。当事者であるはずなのに、どこか別世界の話の様でもあった。
「知っています」
「君は優秀な学生だ。だからこそ私も聞く。思い止まってはくれまいか?」
伯爵の声に、怒りも、哀惜の念もなかった。ただ、静かに語りかけてくる。それが、最も効果的である事をよく知っているのだろう。
「……残念ながら、そのつもりはありません」
そして、その程度で挫ける様な決意ではない。仮にその程度の発言で挫けるようならば、最初からこの人物に相談していない。
「そうか……」
伯爵は何かを考えている。虚ろな目がボクを、ボクの背中の向こうにある何かを見つめている。
時計の針が動く音だけが聞こえるようになってきていた。気がつくと、あれほど騒がしかった犬の吠える声はもう聞こえない。
目を瞑り、視野を遮る。心臓の鼓動に音を傾け、他の音を耳から締め出す。今は、時の経過を感じる全てのものが疎ましかった。そんなボクに、面前の人物は、静かに告げる。今までと変わることなく、ただ訥々と。
「君が、強い決意をもってこの話をしてくれた事は分かった。だが、私とて軽々しくこの話を許可するわけにはゆかぬ。よって、訳を聞かせてくれないか。その返答如何で、協力するべきかを判断しよう」
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