Eins

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 講義棟は東から西に、第一、第二の順に並び、第五講義室まである。一応三階まであるのだけれど、上の講義室は四年生もしくは法科大学院とか官僚育成院のような上級生しか使えないことになっている。  講義室から雪崩のように生徒が出てくる前に三講を飛び出したボクの視界に飛び込んできたのは、ベンチの上で暇そうに寝そべっている、茶髪の問題児の姿だった。 「よう、キース」 「……また講義サボったでしょ、ベラ」  ベラ――これが茶髪のニックネーム。本名はユリウス=ベラロッテ。因みにボクはキース・ロロッカ。ボクの大学生活における多くない友人の一人。茶髪からチラチラ覗く耳にはピアスが開けられていたり、ロクに洗濯していないヨレヨレの制服を着ていたり、お世辞にも真面目な生徒ではない。でもボクはコイツを結構気に入っている。 「いーんだよ、どーせテストは期末まで無いし、学部長は出席とらないし~」    こんなことを言っている。来週テストがあることを言ってやろうかやるまいか、ボクがそんな事を考えていると、ベラはいきなり身体を起こした。 「飯、食いに行こうぜ」 「あ、食べてないの?」 「起きるのが遅すぎて寮の昼飯食いっぱぐれた」「…………」  呆れた。  王国立大学は広い。どのくらい広いかと言うと、構内を巡回する準公共交通機関を使わないと端から端まで移動できないと言われる程広い。法学部棟は広大な敷地の西側に位置しているため、門を出て帰るのは楽なのだが、学生の憩いの場である食堂まで行くには乗り物を駆使しないといけない。  そんな訳で、ボクとベラは車に乗り込み、食堂に向かうことにした。その道中、来週テストがあることを伝えてあげると、面白いくらいにベラの顔が蒼くなった。 「うそだろ?」 「本当」  嘘を言ってどうするのさ。そう突っ込むと、向こうも「そりゃそうだな」とあっさり認めた。 「範囲は?」 「13条から28条。それと41条」 「……『異端児』が範囲にあんのかよ」  実に嫌そうにベラが零した。
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