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王国立憲法41条。法治において先進国と称されるこのノルスティン王国において、41条は外国より『異端児』と呼ばれることがある。
その原因は、「歴史は、これを学ぶことを禁ずる」という文言を見ればすぐに分かってくれると思う。通常、国の歴史を学ぶことはその歴史が正しいか否かはともかくとして当然のこととされている。
ところが、この国ではそうではない。歴史を学ぶことを、よりによって国の最高法規である憲法が禁止しているのだ。
しかも41条の規定は刑法による罰則の委任が認められており、それを反映した王国刑法では、この罪の違反に対する刑を死刑のみと定めている。刑法には幾多の罪名があるが、刑が死刑しかないのはこの罪を除くと外患誘致罪――つまり、外国とグルになってこの国へ武力行使をする罪しかない。
こんな規定だけあって、41条は憲法学界でも常に注目の的であり、幾年にも渡り議論や論争が巻き起こっている。
学生から見たら、それだけ色んな学説が存在していることになるので厄介なのだ。
車が石畳の道を進んでいる時間は短い。あっという間に大学の中心部に辿り着き、ボク達は食堂で昼食をとることになった。食堂と簡単に括っているが、食堂の中に全くジャンルの違う店が10は並んでいる。安くて、しかもなかなか美味しい。この時間だと、人が少ないので席に座っているのも苦痛ではない。
ボクはパスタの専門店からペスカトーレを、ベラはピザのブースからトマト&バジルのピザブルーチーズ乗せなる、冒険としか思えないピザをチョイスした。
食事の最中も、話はテストで持ちきりとなった。
「41条は多分記述だよな。仮にお前が試験受けるとすりゃ、どんな答案作る?」
いきなり面倒な質問が飛んできた。ちょっとだけ考えるが、答えを用意するのは難しい話じゃない。面倒なのは説明だ。
「そうだね、まずは『歴史』という単語の意味内容から検討に入るかな。昔話や老人の回想も『歴史』として捉えるべきとか、子孫に文化を教えることも『歴史』の一環として捉えるべきかどうかをまず検討する」
「ふんふん」
「これを簡単に検討したら、次は『学ぶ』を検討する。学校教育として教えることのみを禁止しているのか、あるいは個人の趣味による学習をも禁じているか」
「なるほど」
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