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自分で考えてほしい……。そう思っていても全部言おうとしてしまう辺り、ボクも甘い人間だなと思ってしまう。
「最後に、『禁止』という方法に正統性があるかを検討する。この規定も権利の制約だから、もし他に権利を制限せずに同様の効果を齎せる規制方法があるのなら『禁止』という方法は違憲となる。思いつかないなら合憲って結論になる」
……あー面倒だった。
因みに、今のような考え方が原則である。出題時に事例問題として出てきた場合は、これに加えて事例に沿ってどんな判決になるかまで書くのが一般的な答案形式となる。一問で少なくて800字から1000字くらい……多分。
一気に話し終えてから水を飲み干すボクの横で、ベラはしきりに感心していた……記憶があっているのなら、コイツはボクと同じ学部の筈だけど。
「単位がとれればそれでいいから考えたことないな」
頭が痛くなってきた。
「しかし、それだけの知能を持つお前が休学するとはな……」
「あれ、ボクその話これからするつもりだったけど?」
言った記憶がないだけに、この発言には驚かされた。ベラは確かに情報通だが、まさかほとんど誰にも話した記憶のない事実を知っているとは、超能力者か何かだろうか?
ボクの、恐らくは頓珍漢な方向に向かっている考えを全く知らないまま、ベラは平然と答える。周りに誰もいないので、声をひそめる素振りもない。
「アルファドさんから聞いた。『何故休学するのか知っているか?』って聞かれたからな」
あ、そっちか。確かに学部長に休学届を出したんだった。しかし、まさかボクの身辺調査みたいなことをしているとは思わなかった。唐突な事実の提示に、ボクの心臓が不安に駆られる。
だがそんなボクの思いを、ベラが知るわけもなく。
「アルファドさん、お前に関心があると見えたな。『あんな成績優秀な生徒が何故……』ってぼやいてたぞ」
饒舌にその時の話を教えてくれた。ベラは「黙っていてくれ」とか「秘密にしておいて」と前置きしない限り、口が軽い。役に立つ時もあるけど、これでトラブルになったこともある。自重して欲しいと思っているけれど、言ってどうにかなる様ならもうとっくにどうにかなっているだろう。つまり、上手くいっていない。
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