Eins

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 王都リプラは、独特な構造を形成している。街の西側の中心に王国立大学の敷地があり、それを囲むように商店街や新興住宅地が形成されている。  一方、東部の中心は王宮を始めとする行政関係の建物であり、その周りを固める建物も大会社の本店等、左右でものの見事に役割分担がされている。  そしてその両者に境目役となっているのが、街の中央にある蒸気機関の線路と、路面蒸気のそれである。  一見、不可思議な構造に見えるものの、これは『学問に対する行政の介入』を防ぐ意味があるとの噂もある。事実なら国王陛下の御意志を称賛したいが、それが真実かを判別することは不可能だ。  そして、今ボクは西区画の中心から更に西にある商店街へと足早に駆けている。  途中でおばちゃんが売り込みをしている声は全て無視して、商店街の中心に設えられた噴水へと向かう。  噴水の縁に、その人物の姿があった。流れるような茶髪を肩甲骨まで伸ばし、ニットワンピースとハイソックスを着こなしている。あまり多くない素肌の部分が妙に艶めかしい。エプロンを着けているのを見ると、仕事が終ってすぐにここまで来たようだ。 「待たせた?」 「あ、キース。仕事終わったばっかりよ」  彼女はこちらの声に反応して、大声を出した。両手で手を振らなくても分かるから止めてほしい。周りの人がクスクスしながら通り過ぎてるから本当に止めて。  彼女の名前はノイ・リスタイア。商店街の中にある花屋の看板娘であり、ボクの……彼女、です、はい。付き合って大体1年位……だったと思う。因みに怒らせると面倒な方。面倒でない方は夜にボクの部屋で待ち合わせと記憶している。 「新しいエプロン、似合う?」 「……新しいものと気付かなかった、ゴメン」  正直に言ったら膨れてしまった。女の子の扱いは正直言って苦手だ。だから、ノイとこうやって会っていても時々こんな場面がある。とりあえず謝って、いつも事無きを得ている。 「むー」  おや?いつもならこれで一応どうにかなるのに、今日は虫の居所が悪いみたいだ。子供っぽい面があるので、怒らせると面倒くさい。本人曰く「キースにしか怒らないからいいの」とか言っていたが、ちっとも良くない。 「あのさ、キース」 「ん?」  彼女らしくない低音が鼓膜を震わせる。嫌な予感が脳裏を掠める前に返答が唇から漏れてしまう。 「私達のデートって、これで多分お休みでしょ?」
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