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…と、今の私はこんな感じだろうか。
言葉の練習と思って、こっちの言葉で頑張って回想してみたけれど、何だが上手く話せてる気がしない。
間違ってはいないと思うけど、なんだか少し堅苦しい気がする…。
そもそも奴隷って話しても良いのだろうか…。
「私、奴隷…。」
「あ? 何か言ったかぁ?」
「…………。」
「やっぱ無理か…。」
奴隷商はそういって前に向きなおり、馬をピシッと鞭で叩く。
奴隷商は私の独り言に反応するけど、私は彼の言葉に返事が出来ない。
……いや、だって私人見知りだもの。
すぐにこっちの言葉で返事が出来ないのもあるけど、話すこと自体がすごく緊張する。
村では完璧なのけ者だったせいで、まだこっちの言葉で誰かと話したことがないわけで…。
つまり、私は話すのが苦手。
どうやったら人と話せるんだろうか。
いや、話せないとこれからが困るはず…。
練習…練習…。
「……あにょ。」
…噛んだ、もう嫌帰りたい。
「あぁー?」
「…馬車、どこ、向かう、ですか?」
やっぱり頭の中で話すのとは違う…上手く話せない…恥ずかしい。
「なんだ、お前しゃべれんのか?
珍しいなぁ…まだ誰とも話したことないんだろ?」
奴隷商は少し驚いた顔をした。
珍しいって…馬鹿にされるよりましだけれど。
「…なぜ、話、ない、わかる、ですか?」
「それは俺が長年奴隷商してるから、じゃあわかんねぇか? わかんねぇだろうなぁ…。
まぁあれだ、お前の村みたいな辺鄙なとこは獣人差別が激しいからな。街とかそこら辺なら話かけくらいはするが、お前んとこじゃありえないわ。
……お前は街でも話し掛けられないかもしれないがな。まぁ、だからかは知らねぇが、話せない奴も多いんだわ。」
どっちにしろまだガキにはわかんねぇか…、と奴隷商はそういいながら頭をゴリゴリと掻いた。
…なんだか奴隷商というわりには、そんな悪い人じゃなさそう。
話せない、と思ってたのにわざわざ反応してくれてたし。
「…ありがとう、でしゅ。」
…また噛んだ。
今まで話してなかったから上手く舌が回らないのかもしれない。
「はっ…もう暗いからガキは寝とけ。」
奴隷商さんはそういってまた前を向いてしまった。
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