耳と尻尾と牙と角、それは奴隷。

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たしかに、もう子供は寝る時間かもしれない…。 寝る前に少しだけ奴隷商の様子を見てみようと思ったけれど、フード付きの外套を着ていて後ろからじゃ全く様子がわからなかった。 そういえば、結局どこに行くのか教えてもらってない…。 …別に、明日でもいいかな。悪い人じゃなさそうだし、明日は頑張って話し掛けよう。 そう思いながらその日は眠った。 翌朝、私が起きた時、私には奴隷商さんが着ていた外套がかけられていて、私の隣で奴隷商さんは毛布も何もかけずに胡座をかいたまま寝ていた。 かけてくれた…のかな? 今は季節で言うなら春ぐらいの温かさだけれど、それは昼間だけで夜になるとよく冷える。 そうはいっても、歩けるようになってからは年中家の隅で寝ていた私はもう慣れっこなんだけども。 でも、奴隷商さんは寒かったんじゃないかと思う。 なんだか、申し訳ない…。 申し訳ない、申し訳ないとは思うのだけれど…。 それ以上にもう嬉しくて嬉しくて、仕方がなかった。 奴隷商さんは本当にいい人だ。 こんなに親切にしてもらったのは神様以来初めてで、もうなんていうかよくわからないけれど、とりあえずジタバタしていた。 しばらく激しくジタバタしていたものだから奴隷商さんが起きてしまって、不気味がられた。 髪の塊にジタバタされたらこえぇだろうよ、とのこと。 ただ喜びを表現しただけなのに…。 それから午前中は嬉しさに任せて奴隷商さんに話し掛けに話し掛けた。 とりあえずは奴隷商さんについての質問をし続けた。 奴隷商さんの名前はレイ=マースクラム。 見た目は、黒っぽい赤髪短く刈り揃えられていて、無精髭のちょっと生えたけだるそうな顔をした二十代後半男性。 奴隷商人歴は10年になるとのこと。 歳は本人が言うには、永遠の23らしい。 …ちょっと意味がわからない。 まぁ少し変なところもあるけれど、基本的にいい人だ。 延々、とろとろと質問する私に嫌な顔一つせずに本当にどうでもいいことでも一つ一つちゃんと答えてくれた。 むしろ、こんなに話せるなんて賢い、と頭まで撫でてくれた。 村での生活が嘘みたいに感じるほど、レイさんはすごく優しい。 レイさんに会えてよかったと思う。
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