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そのまま夕方頃になって、そこで初めてレイさんから私に話し掛けてきた。
「そういえば、まだ俺らがどこ向かってるのか教えてねぇよなぁ?」
…忘れてた、ちゃんと聞こうと思ってたのに。
どこに行ったの、昨日の私…。
「はい…聞く、ない、です、まだ。」
「そうだよなぁ…本当は最初に言うんだがな…。忘れてたとか、俺も歳かぁ?」
そういってレイさんは頭をゴリゴリと掻いた。
…永遠の23歳も歳をとるのだろうか?
「まぁ…そんなことはどうだっていいわ。俺らは今、アウメト鉱山っつーとこに向かってる。」
「鉱山…?」
「そう、鉱山。あ、鉱山わかんねぇか?」
「わかる、ます。」
私がそう言うと、レイさんは頭を撫でてくれた。
…癖になりそう。
「よく知ってんなぁ…。んでだ、そこがお前の職場になるってわけだ。まぁ具体的になにやるかは聞いてねーがな。」
「仕事、力、です?」
「いや、力仕事は流石にねーんじゃねぇか?獣人つってもお前くらいのガキじゃ使い物になるとは思わねーだろ、普通。」
「…………。」
…本当にそうだろうか?
レイさんが優しいから忘れそうになるけれど、あくまでも私は奴隷。
どんな風に使われても文句は言えないだろう。
「そんな心配すんなって。あっちも金払ってんだから、ホイホイ死ぬようなことはやらせねぇよ。しかも、ラッキーなことにあそこは既に二人の獣人が働いてるからな、つーかそいつらしか働いてないんだが。何かあったらそいつらを頼ればいいだろうよ。」
そういってレイさんはまた私の頭を撫でる。
「実際、お前ラッキーなんだよなぁ。そもそも、お前くらいの歳だと王都に連れてかれるのが普通なんだわ。そこで最低限、使い物になる歳までは隔離されて育てられるわけだ。それよか、同じ獣人と生活するほうが全然いいんじゃねぇか?」
「……はい。」
確かに、隔離よりはマシな気がする…。
いや、マシとかではなくむしろ良かったんじゃないだろうか?
楽しんで生きる上でプラス思考は大事だと思う。
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