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「そんなこと言わないでくださいっ!!」
ポロリと私の口から零れた言葉が神様(?)は気に入らなかったらしい。
言った瞬間、怒鳴られた。
それでも、一度零れ始めてしまった言葉はもう止められない。
「だって、そうじゃないですか?
私、自分が死ぬとき何も感じなかったんですよ…?
父親に対しても母親に対しても、何も感じなかったんですよ?思ったのは形式上の言葉程度です。
私にちゃんとした感情が、愛情があったとしたらもっと色々感じるはずでしょう?
父親には怒っただろうし、母親にはもっと感謝してたはずでしょう?
生きていたいだなんて、一回も思いませんでした。
私は自分の家に世界に、なんの愛着も未練もなかったっていうことでしょう?
未練も愛着もあったなら、本当にあったなら、もっともっと…もっと死にたくなかったはずです!
まだまだ生きていたかったはずですよね?!」
最後の方には我慢出来ずに声を荒げてしまった。
少しだけ肩で息をする。
…こんなに話したのは本当に久しぶりな気がする。
「愛情のない人なんて、いませんよ。ましてや感情がない人なんて…。」
そう言いながら神様は私の手をとり、両手で優しく包みこむ。
「でも、私は…。」
「じゃあ、なんで今あなたは怒鳴ったの?」
なんで…?
なんでだろう?
「……ただ話してるうちに、なんで私はこんな人間なんだろうって…なんでこんな嫌な人間なのかなって、そう思って…。」
「さて、問題です! そう思うことを一般的に何と言うでしょうかっ?」
手を握ったまま、神様はさっきのニコニコ顔に戻る。
なんだか、神様の笑顔にはすごく癒し効果がある気がする…。
「え…自己嫌悪ですか?」
「そう、自己嫌悪! 自己嫌悪って感情の一部ですよね?」
「あ…。」
そう言われれば、そうだ。
いや、普通言われなくても気づくようなことだろう。
「ほら…感情、あなたにもあるでしょう?
ただ、ないと思い込んでただけなんですよ。
それにあなたは他の人より愛情に溢れてる人です、私にはわかります!」
なにせ愛情の神様ですからね、と神様が優しく微笑む。
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