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《大人の恋》
次の日、高橋さんに報告。「良かったね」としか、言ってくれなかった。
会社では、残り少ない、ここでの仕事。
ここに、入社しなかったら、てっちゃんにも逢えなかったし、仲間や高橋さんや、楽しい思い出がいっぱいだ。
後、数日でさよならだ。
今日もてっちゃん宅。
帰ってきて、いつもと変わらず、お風呂直行。
ただ、違ったのは、私が来てから、何度も電話が鳴っていた。
てっちゃんからは、電話は、出るなっていわれていたから、出てない。
てっちゃんが、お風呂から上がる直後、また、電話。「てっちゃん、電話」と言ったら、タオル巻いて、電話に出る。
一瞬にして、知らない、てっちゃんの顔、声。
「はぁ〓?お前、何いってんの?」と初めて聞いた怒鳴り声。
うろたえる私を感じたのか、「陽美、少し、外で待って、すぐ、終わるから」と言った、てっちゃんは、いつもの、優しい目だった。
表に出て、話は聞こえないけど…多分、てっちゃんの一番の女の人なんだろうなぁ。あんな、てっちゃん、みた事ないし…
やっぱり無理なのかな?
まだまだ、私、ガキだし…
てっちゃんには、もの足りないのかも…
なんて、考えてた。
大人の恋か…と深いため息。その瞬間、後ろから、抱き締めるてっちゃん。
「ごめんな。イヤな思いさせちゃったね」と優しいてっちゃんに変わってた。
でも、淋しそう…
「何かあったの?」と聞きたかったが、怖くて聞けなかった。
突然、何かを袋に詰めて、「陽美、ドライブ行こう」と、2人で、出かけた。
「俺の秘密基地」といいながら、隣の市内。
海まで、近い。潮の香りがする。
私は、てっちゃんの後を、追い掛けた。
国道134を渡り、砂浜に出る。
夜の海は静かだ。
突然、袋を燃やし始めた。
「何?どうしたの?こんなとこで、燃やしたらヤバイよ」って言ったら、急に、泣きはじめた…
「どうしたの?」とてっちゃんに、近寄る私。
私の腕を掴み、てっちゃんは語り始めた。
「俺…一番の女に振られたよ。あいつも、他に好きな奴いたし、まぁ、傷のなめあいから、始まったんだけど、いつの間にか、好きになっていた。陽美と、もっと早く、出会えたら、こんな事なかったのになぁ!」と、初めて、男泣きを見た。私の腕は、いつの間にか、てっちゃんの頭を包み、黙って、てっちゃんの哀しみを分かち合いたかった。静かに、波の音だけが、聞こえた。
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