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世界には二つの顔がある。
科学に基づく世界。異能に基づく世界。
霊獣、聖獣、契約――それらは皆、“もう一つの表の世界”だ。
世界に裏はない。そこに生きる人々がいる限り、裏にはなりえない。
そんな“表”の世界で、一つの戦いが起こった。
――ロンドン開戦。
戦争の規模としては、過去最大級のモノだ。なにせ、今まで闇喰いが直接クロスの支部を襲うなんてことはしなかったから。
あくまで彼らには彼らの目的があり、クロスはその障害に過ぎなかった。
しかし――だからこそ、その障害が目的に変わった今、動揺、混乱、恐怖が世界を蝕む。事実、瑞穂の忌み嫌う権力者たちはこぞって、大金を払い自分を護らせるようクロスに要請した。
その異変は、形を伴って姿を現す。
目覚めるは、太古に眠れし霊獣。
様々な生命体に宿ったそれらは、各地で混沌を招いていた――
†
「まーたオレらかよっ!」
仄暗い空間。おそらくは建物の中。
場所は廊下だろうか。窓の外からの光はない。辺りは引きずり込まれてしまいそうな深い黒に包まれている。その中で一際、煌々と輝きを放つ蝋燭の炎。
そのそばで、短髪の少年は怒気のこもった声をあげる。
「今回でオレたちは5回目だぞ! 前回は南アフリカ! その前はブラジル! どんだけ飛べばいいんだよオレら! めんどくせえよもう!」
ドン、と壁を殴りつける少年。
世界各地に飛ばなければいけない、ということより、自分たちだけに押しつけられているということが気に入らないらしい。
そんな彼のそばで、小さく溜め息を漏らす少年がもう一人。
「仕方ないよレオルド。僕らの能力が一番捕獲任務に適してるんだもん。それはレオルドもわかってるでしょ?」
「そりゃそーだがよぉ……お前は不満に思わねーのか、コルト?」
「雑用はもう慣れたよ」
氷を扱う少年、コルト。
彼はその氷のような冷静さとスキルの多様性から味方の後陣を任されることが多く、この前のゼオンやレイズの撤退の手助けのような仕事も多い。
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