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しかし、他人が彼に最初に会った時に感じるのはそれだけではない。
「な、なあ」
話しかけるなオーラをバシバシ醸し出すロアに対し、うわ、話しかけづれえ……でも同じ班になったんだし聖獣契約者どうし仲良くしていかないと……と勇気を出して雫が声をかける。
佳蓮が一人、あっ……と声を出して止めようとするが、雫はそれに気付かず話し始めた。
「なんて呼べばいいかな? ブラッドリー? それともロア、の方がいいか?」
「……」
ロアの反応はただ一つ、無視である。スタスタと空港内を歩いていく。
少々呆然とする雫だったが、メゲずに再トライする。
「えっと……じゃあロアで。ロアはどこ出身なんだ? アメリカっぽいけど……当たってるか?」
「……」
「……ええと、ロアの聖現ってどんなのなんだ? 電撃を扱うって聞いたけど」
「……」
「……ちょっとくらい答えてくれたっていいんじゃねーの?」
さすがにムッとしたのか、語気を強めて雫が言葉を発する。
ようやく足を止め、振り返るロア。その口から放たれたのは
「うるさい」
「な……」
「少しは口を閉じたらどうだ。黙るという最低限の動作、幼稚園児でも出来るぞ」
「……あ?」
ブチブチ、と何かが千切れる音を瑞穂は聞いた。それは間違いなく雫の堪忍袋の緒が切れた音であった。
あちゃー、と佳蓮は額に手を当て、ミーシャはやれやれと肩を竦める。
高圧的な態度。それがロアの性格である。
誰が相手でも高慢ちきであり、その態度は無愛想であること以上に他者を苛立たせる。
もちろん、雫も例外ではない。
「なんだその態度。せっかくこっちが気ィ遣ったってのにそれはねーんじゃねーの?」
「生憎と余計な気遣いだ。僕はそんなもの望んではいない。押し付けも甚だしい」
「なに? つっけんどんとしてるのがかっこいいとでも思ってんの? ハハッ、勘違い乙」
「僕はかっこいいと思ったことはないし、そもそもかっこよさの定義は個人の見解にもよるだろう。自分の基準でしか物事を量れないのか。小さいヤツだな」
「他人の気遣いを突っぱねるヤツだけには小さいとか言われたくねーな」
睨み合う両者。特に雫の方はだいぶマジギレしている様子で、ガンの飛ばし方が半端ではない。
まさしく一触即発の空気である。
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