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-‥人間界・結界の森
『…き……か…』
…誰かが呼んでる。だが瞼が重くて目を開ける事が出来ない。
ふわりとした感触を頬に感じてルディは重い瞼を開いた。
瞳に映ったのは仔犬。
「リ…キ…」
フリフリと尻尾を振る仔犬に自然と笑みが浮かぶ。触れようと手を延ばすも、ギシリと痛む身体にそれさえも出来なかった。
しかしその痛みは、朦朧だった意識を覚醒させた。
(僕…は……生きてる…?)
何故?どうして?どうやって?
起動しだした思考回路フル回転している筈なのに、現状を僅かに理解したたけで分からない事だらけだ。飛び降りてからの記憶がない。
自身が飛び降りてすぐに意識を失った事を、ルディは覚えていなかった。
「…ッ…」
無理に考えようとすれば頭が痛む。ルディは考える事を一時中断しゆっくり上半身だけを起こすと、すぐ側にある木にもたれ掛かった。
深く長い息を吐き出す。
「…痛い…」
「随分酷い怪我だもんな」
「!!!」
かけられた声に驚き、体の痛みさえ一瞬と忘れ勢い良く顔をあげ言葉を失った。
目の前には自分と同じ目線までしゃがみ込んでいる男がいたのだ。
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